菖蒲冠
(あやめこふふり)
2022年6月4日(土)15:00開場15:30開演 
於 : 生田緑地(菖蒲園)

新作書き下しの能。能楽師以外のミュージシャンたちによるハイパー(超越したスタイルの)能。
現世の菖蒲の花咲く園で、ふたりの少年が出会う。その夜、彼らは前世の姿、斎王(祭祀に奉仕する未婚の内親王)と官司(宮廷の役人)として出会い、初めて言葉を交わす。斎王は自分の性について官司に告白する。
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●ご挨拶

 斎宮(さいぐう)という制度が、12世紀の平安末まで、さらに途絶えながらも13世紀までありました。「斎宮」という場所に、神に仕えるためにという理由で、未婚の天皇の姉妹、皇女である内親王たちが、誰にも接触することなく神聖隔離される時代が、史実によっても、少なくとも680年は続きました。

 人間には、どこへ行ってもいい自由、誰と結婚してもいい自由、自分を表現する自由が保障されている、という基本的人権の認識は、日本ではまだ100年にも満たないのです。

 私たちは、基本的人権に関して未熟であり、まだまだ認識の過程にいるにしか過ぎません。さらに人々の理解への努力がなければ、あっと言う間に日本の人権の歴史は逆戻りします。

 私たちは、人種について考え人権を尊重することすら、未だおぼつきません。

 性(自分は女性か男性か)の自認の自由も2000年、21世紀に入ってから、ようやく認識されるようになりました。

 日本の古典作品、日本の風習、風俗の歴史を紐解けば、多くのLGBTに生きる人々の歴史があります。しかし、それは決して「表(おもて)」の歴史ではありませんでした。

 この作品は、男女の性を越えて、人として恋愛の感情を抱くことの美しさ、そこに芸術的表現が宿ることを証明しようとしています。

 「菖蒲冠」は、隠された芸術ではなく、誰もが共感する愛情の美を伝える幽玄(現世を越えた世界)の能の作品です。

桜井真樹子

●作品・出演者について

 桜井真樹子による原作・台本・作曲の新作書き下し。能楽師以外のアーティストとミュージシャンによる「ハイパー(超越した)能」の形式で創作された。

 音に内在する生命に耳を傾け続け、導かれる灰野敬二の音こそ、音によって魂を呼ぶことができる。灰野敬二との即興の活動をしてきた桜井真樹子によるシテ(主役)は、幽玄(現世を越えた世界)から訪れる斎王の役。喜多流の能をリチャード・エマートに師事する吉松章は、斎宮で勤める官司(役人)の一つ花苑司(はなぞののつかさ)でワキ(ワキ役)を演じる。

 地謡メンバーは櫻井元希、金沢青児、柳嶋耕太。中世ヨーロッパの合唱曲を専門としている彼らは今回、能のコーラス「地謡」に挑戦する。さらにヨーロッパの合唱の起源であるオルガヌム風新作、15世紀のモテット風新作も担当。最後に桜井真樹子の声明と新作のモテット(ポリフォニー(対位法)による宗教曲のスタイル)を合唱によって日本・ヨーロッパの「中世の祈り」の世界を舞台に繰り広げる。

●本作品のプレスリリースはこちらからダウンロードできます。

お問合せ:まきこの会 運営・制作マリプラ(梅田):info@mari-pla.me / 090-9236-0836

■原作・脚本・主演:桜井真樹子

●キャスト

少年・斎王:桜井真樹子

少年・花苑司:吉松章

地謡:櫻井元希、金沢青児、柳嶋耕太

ハープ・カンテレ・ポリゴノーラ・打楽器:灰野敬二

●スタッフ

制作:マリプラ

音響:イノックスサウンドデザイン

撮影:白岩善行

デザイン:Diminish Design Partners

■菖蒲冠 公演概要

●日時6月4日(土)15:00開場15:30開演

※雨天順延6月5日(日)1週間前に確定する予定です

●会場:生田緑地(菖蒲園)

●場所:神奈川県川崎市多摩区枡形7丁目1-4

●アクセス:小田急線「向ヶ丘遊園駅」下車、南口から徒歩約13分

●料金:3.500円(予約制)

​※会員優先予約3/21~、一般発売3/28~、チケットぴあ4/4~

●ご予約・お問合せ:まきこの会事務局(makikoclub2022@gmail.com / 090-9236-0836)

●チケットぴあ:Pコード511968 / 興行コード2211249

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●あらすじ

現世で出会った少年たちの前世の姿は斎王と官司。初めてかわすことばが菖蒲の園で語られる。

前 幕

 水田にも畑作にもならない土地を主人は、菖蒲を植えて、五月下旬になれば、菖蒲咲く池をと、人々の憩いの場所にした。そこで働く一人の童子(男の子)が、様々な種類の菖蒲を育て、世話をしている。

 そこに今年、初冠(ういかんむり;元服をして成人になると、冠をつける。その元服の儀式の時に初めて冠を着ける儀式のことをいう)の少年が、この冠を菖蒲の花で飾りたいと、童子に語りかける。

 童子は主人から、五種類の菖蒲を採ってもよいと許しを取り、二人で菖蒲を選び出す。

最初は「君のような菖蒲だね」とお互いの美しさを喩える菖蒲を選ぶ。そして二人の気持ちが合わさった菖蒲を選ぶ。最後に童子は、美しい王女であった王昭君の名を持つ菖蒲を、初冠の子にふさわしいと選ぶ。

 その五つの菖蒲を冠にさして、池に映った初冠の子の姿は、まさしく王女、さらに神に仕える斎王(いつきのみこ=さいおう)の姿だった。

 初冠の子は、その姿を見て「私は王女です」と言う。

後 幕

 童子の前世は、斎宮(さいくう:斎王の住んでいる宮殿、と言っても斎宮は菖蒲の生える湿地帯であり、誰も住もうとしない土地に伊勢の斎宮は建てられている)の庭の手入れを任される花苑司(はなぞののつかさ)だった。斎王の姿を見ることなど、ありもしない。しかし、斎王の心を慰めるため、多くの花を庭に植え、五月には菖蒲の池を精魂込めて作っていた。

 そこに初冠の子の前世、斎王が現れる。

 来世で童子と初冠の子は、初めて出会い、夢の中で前世としての花苑司と斎王は初めて出会う。

 斎王は、花苑司に、彼の育てた菖蒲に心を慰められたことに礼を言う。

 しかし、斎王は天皇である父が亡くなったと同時に、祓川に映る月影を追って亡くなった(入水自殺をした)。

 「なぜそのような悲しいことをしたのですか?」と言う花苑司の重ねて尋ねる心に、斎王は遂に、「自分は男であるが、父は、私が女の子のように振る舞う姿を見て、斎王として、人里離れ、独り身を続け、生きていく慈悲を私に与えた。」と、前世で誰にも言わずに死んでいったことを、告白する。すると、天夜は光に満ち、そこに仏が金色に輝いて現れた。

 真実を告げる人こそが、仏を感涙させる。それは仏に目覚めた者(正覚者:悟りを開いた者)である。

 現世(生きているものたちの世界)を取り巻く妄念を放たれよ。万物一体の真理は、平等の障碍(しょうがい:悟りの邪魔となるもの)なき正念より起こるべしと。

 阿弥陀経にも池に咲く蓮は、青、黄、赤、白とそれぞれの色に咲く、そこに優越はない。
まさに蓮の蕾が開く時(夜明け)と共に、二人の夢は消えてゆく。

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